止まらないおしゃべり
我が家のすぐ横には雑草が生い茂っている。
夏には私の背丈を超えるほどに大きく成長するが、これが晩秋になると一気に枯れる。
そうしてしばらくすると、ある日突然始まるものがある。
それが「すずめの女子会」である。
すずめの大群が生い茂った雑草に集合し、ずっとさえずっているのだ。
しかも家の中にいても聞こえてくるほどの声で。
その声は「チュンチュン」「ピーチク、パーチク」のような可愛い声ではなく、なんとういうか、たくさんの鈴の音が同時に鳴っているような「シャラシャラシャラ」といった音に近い。いや違うかな…「ピシャラピピチュピピチチシャラピチピチシャシャチチピチ」というようなーーうぅ、文字にするのは難しい…。
何を伝えたいかというと、あらゆる声が混じっていてとにかく騒がしい、もとい、賑やかなのです。
だからまさしく「女子会」。
とりわけこの時期の女子会なので「忘年会」なのだろうなと私は勝手にイメージしている。
今日も朝から定例会のような女子会が開催中。毎日会っていても話題が尽きないのはすずめも人間も一緒らしい。草むらの種や虫をついばみながら延々と終わらないトークを楽しんでいらっしゃるご様子です。
女子会メンバー集結
「すずめの女子会」の光景は窓からも見えるので観察しているととても面白い。
まずメンバーの集まり方が興味深い。始めに集まった数羽の時点では、さほどおしゃべりをしている様子がない。まるで「あれ?会場間違えた?」もしくは「あー、今日の忘年会メンバーはハズレだなぁ」(失礼!)なんて思っているようにも見える。この時点では各自何かを考えながら静かに待っているような感じ。
ところが、そこに女子会会場の上空を飛んでいたすずめが急降下で参加してくる。飛んでいる方も群れの場合が多いので10〜20羽ほどが一気にメンバー入りする。気が付けば、あっという間に100羽以上が集まっている。
そしてメンバーが揃い、少し落ち着くと、あちらこちらでマシンガントークが始まる。
気の合うメンバーがいるのか、みんなとても楽しそう。
なぜ女子会をするのか
毎日毎日女子会をしているので、こちらも色々と気になってきた。
「何を話しているのだろう」
「何のために集まっているのだろう」と。
春や夏には見られない光景なので、この時期ならではの意味がありそうだ。
そして調べてみるとすずめの女子会について、いくつかの興味深い発見があった。
以下にまとめてみましょう。
1. 若鳥達が群れを形成する
春や夏は繁殖期のため、すずめたちはペアで行動し、巣作りや子育てに集中します。そのため、群れでの行動は少なくなります。一方、秋になると繁殖が終わり、次の季節に備えて集団行動が目立つようになるのです。
2. 餌の確保
秋はすずめたちが冬を越すための体力をつける大切な時期です。草むらには虫や雑草の種など、すずめにとって栄養価の高い餌が豊富にあります。このため、多くのすずめが集まって食事をしているのです。
3. 安全を確保しながら越冬準備
群れで行動することで、次のようなメリットがあります
- 安全の確保:大きな群れで行動することで、天敵(猛禽類など)から身を守ることができます
- 情報の共有:餌場や安全な場所に関する情報を仲間同士で伝え合うことができます
- 体温維持の効率化:気温が低いので群れることで効率良く体温を維持することができます
4. 羽毛の整えと健康管理
秋は冬を越すために羽毛を新しく生え替わらせる「換羽」の時期です。草むらで休息を取ったり、仲間同士で毛づくろいをしたりして、体調を整えている可能性もあります。
こうした理由を知ると、すずめの女子会がただのおしゃべりではなく、人間と同じく実に「意味のある女子会」なのだということが理解できる。不思議とこの止まらないしゃべり声も、厳しい自然を生き抜くための重要な会談のようにも聞こえてくる。
今まで以上に、是非ここでゆっくりと過ごしていってもらいたいと思うようになった。
一緒に春を迎えよう
秋ならではの、この女子会はもうしばらく続くのでしょう。
そしてすずめ達がおしゃべりをひとしきり満喫し終えた頃には雪が降り、長い冬がやってくる。
冬の間、この地域ではすずめの姿はあまり見かけない。
でも私は、春になり、雪が溶けて新芽が顔を出す頃、鳥達が一斉にさえずり始めることも知っている。
そしてその時はもう今のような「女子会トーク」ではなく、「恋人探しの歌」に変わるのだろう。
その歌を聴くのも今から待ち遠しい。
我が家は近年、春には巣箱を設置していて巣立ちを見守ってきている。
春にはそんな楽しみも待っている。
あっ!そうか!今年巣立ったすずめも、きっとこの女子会のメンバーにいるんだ!
そう思うとますます女子会のトークが気になってくる。
「ここの巣箱は最高だったよ」なのか「ここの家族は騒がしいよ」と言われているのか。
何を言われているのか気になるが、真実は知らない方がきっと幸せだろう。
「よろしかったら、来年もどうぞ我が家の巣箱にお越しください。」
女子会会場を見守る一人として、ここは謙虚に心の中で宣伝しておこう。
ではまた春に、新しい巣箱を用意して待っていますね。
「すずめの女子会」のおしゃべりを録音しました。
ご興味のある方は是非想像しながらお聴きください。