それは干し柿に恋した息子のために始まった
北海道に住む我が家。生活の中で柿の木を見る機会なんてほぼない。
寒すぎて育たないらしい。
北海道でも「北の湘南」と呼ばれる伊達市には柿並木があり、近年では札幌でも育つことが確認されているようだけど、まぁ普通に栽培されているわけじゃない。
本州の夫の実家には柿の木があり「猿と取り合った」なんて昔話的エピソードも聞かせてくれるが、ここ北海道では柿を食べるならスーパーで買うしかない。
しかも柿と言えば甘柿の方ね。
しかし我が家の息子はと言うと、なぜだか幼い頃から「干し柿が好き」と言うじゃないか。
スーパーで干し柿を見つけると、目をキラキラさせて舌なめずりをして「買って欲しい」とねだる。
完全に干し柿に恋してる顔だ、これは。
うーむ。
しかし干し柿って手間がかかるお品なので、なかなかお値段が張る…。
気軽には買えない。だから…
そうして4年前に始まったのが、我が家の「干し柿作りプロジェクト」(私だけ)。
渋柿の調達は、いつもありがとう「メルカリ」で!
しかもせっかく作るなら美味しい品種がいい、ってことでこだわりまで芽生え始め、辿り着いたのが「西条柿」。
大きさ、色、味も素晴らしくて我が家のお気に入りとなった。
でも干し柿を作るまで柿にこんなにたくさんの品種があることを知らなかった。
形、サイズ、種の有無、完全渋柿、不完全渋柿、産地…
品種によっては輸送に耐えられないので周辺地域でのみ消費されているものもある。
奥深き柿の世界。楽しすぎる。
軒先に干し柿が揺れる風景
メルカリで渋柿を買い→せっせと皮をむき→紐を結んで→熱湯消毒して→外に干す。
今年の第一弾は深夜作業となり、オリオン座の輝く星空の下で44個を干した。
翌朝、秋風に揺れる柿たちを見て満足…が、これでは足りない。
再びメルカリで渋柿を買い→せっせと皮をむき→紐を結んで→熱湯消毒して→外に干す。
今回は休日返上で作業をし、青空の下でいつもの軒先に並べて
「よし!これぞ秋の我が家の姿!」と大満足。
青空と柿と我が家の色味がピッタリでこの光景を眺めるのも大好き。
毎年これを見たくてがんばっているとも言える。
合計81個!よくがんばった、私。
…と思いきや、その夜に夫がぽつりと呟いた。
「毎年息子に譲って僕は満足に食べられていないんだよね…。」
え、まさかの追加!?
再びメルカリで渋柿を買い→せっせと皮をむき→紐を結んで→熱湯消毒して→外に干す。
今回も休日返上で作業をし、先輩柿が揺れる軒先に新入り柿を並べて大・大・大満足!
合計144個。
我が家史上最高の個数に到達。
もう家の前に「干し柿はじめました」と貼り出したいほどの迫力。
これだけ軒先に並ぶとご近所さんも見上げて声をかけてくれる。
特に北海道で干し柿は珍しい風景なので、近所の子ども達も配達員さんもヤクルトさんもみんな見上げて話かけてくる。今年はいよいよ恒例になってきて「干し柿の季節ですねぇ」と言われるまでになった。
うれしかった。
みなさんと会話しながら「大丈夫。みなさんにも配れます!」と心の中で叫ぶ私。
そのための144個。
さぁ、みんなに見守られて今年も美味しい干し柿ができあがりますように。
求む!干し柿友達!
さて、干し柿を作り始めて気づいたことがある。
ここは北海道の中でも特に寒暖差が激しい地域なので、甘さが凝縮されて、実は干し柿作りに最適な環境なのではないか、と。毎年最高に美味しい干し柿ができるのだ。
まぁ原料の渋柿は本州にしか無いので「干し柿屋」を開くことはないけど、個人宅で作る人がもう少し増えて、お互いの漬物を自慢し合うような感じで「干し柿友達」(年齢問わず)ができたらいいなと密かに思っている。
「まぁ、あなたは蜂屋柿で作ったの?」
「あら!良い具合に干せてるじゃない!」
「今年は色が綺麗にできたわねぇ」
なんてお茶を飲みながら干し柿談義をしたい。
実は中身はおばぁちゃんかもしれない、40代の私です。
今日も柿たちは青空の下、秋風に揺られている。
あぁ、かわいいなぁ。