タイトルに分かりやすく書きましたが、最近私が聴いているのはベトナムのポップミュージック(V-Pop)です。家でもV-Popを流していると、子ども達が口ずさんだり鼻歌を歌ってくれます。そんな様子を見るたび、思わず心の中でガッツポーズを取ってしまいます。
今では、YouTubeや音楽配信サービスのおかげで世界中の音楽をいつでも聴けるようになりましたが、ベトナムの音楽を聴いたことがある人はまだまだ少ないのではないでしょうか。
今回はV-Popについて熱く語ります!
V-Popの特徴
V-Popは、伝統的なベトナムの音楽要素と、K-PopやJ-Pop、アメリカのポップミュージックからの影響が融合した独自のスタイルを持っています。ベトナム語特有の声調を活かした美しいメロディーが特徴で、感情豊かな歌詞が多いです。恋愛や家族愛、日常生活をテーマにした楽曲が主流ですが、近年は社会問題を扱った曲も増えており、ベトナムの“今”を感じることができます。
また、近年はミュージックビデオ(MV)の制作に力を入れるアーティストが多く、ストーリー性のある映像や高品質な映像美で惹きつけられます。私もYoutubeで色々なアーティストのMVを見ていると、最近のJ-Popではあまり見られないような豪華な演出や、出演者の多さに驚くこともあります。
次に、音楽を紹介する前に「ベトナム語」について簡単に説明しますね。
「ベトナム語とは?」を知ると、より一層V-Popを楽しむことができますよ。
ベトナム語について
そもそも「ベトナム語を聞いたことがない」という人の方が多いかもしれませんね。
今でこそベトナム好きを公言する私ですが、ベトナム語にきちんと触れたのは大学時代。ベトナムという国に興味を持ったのが先で、言語については何も知らずに学び始めました。
学べば学ぶほど奥が深いのはもちろんですが、学び直しをしている今も、この言語の面白さに改めて気付く日々です。
では、はじめにベトナム語の特徴を簡単に説明しましょう。
1. 声調言語
ベトナム語の最も特徴的な要素は声調です。声調とは、音の高さや抑揚によって単語の意味が変わる仕組みのことです。ベトナム語にはなんと声調が6つもあります!
2. 文字はローマ字を使う
ベトナム語の文字は日本人にも馴染み深いローマ字を使用しています。
さらにそのローマ字の上や下にベトナム語の特徴である声調を示す記号が付きます。
例: á à ả ã ạ
記号によって発音の仕方が変わり、同じスペルが並んでいても声調記号の違いで意味も変わります。
ベトナム語では声調が重要なので、発音においてもいわゆるローマ字読みをしただけでは通じないのがこの言語の難しいところ。
3. 文法のシンプルさ
ベトナム語は文法が比較的シンプルで規則的です。また、動詞の活用や名詞の性別や数の変化がありません。
この点は英語よりも学びやすいですね。
また、多くの単語が1つの音節で完結する「単音節語」であり、各音節がそれぞれ1つの意味を持つため、言葉全体が簡潔でリズミカルになります。
例文:Tôi ăn cơm.
(トイ アン コム:私はご飯を食べます)
- Tôi(私)
- ăn(食べる)
- cơm(ご飯)
それぞれが1音節で短い単語なので、発音すると「トイ・アン・コム」とテンポ良く響きます。
その他にも特徴はありますが、今回は割愛しますね。
ベトナム語は音楽のような言語
ベトナム語では、声調が正確でないと意味が全く異なる言葉になってしまうため、発音の抑揚に敏感になります。この「音の流れ」による意味の違いが、リズム感のある会話を生み出します。
私のベトナム語の恩師は「ベトナム語は音楽のような言語」と表現していました。そして「様々な声調を聞き分けるため、耳が日本人よりも良いので音痴がいない」とも言っていました。確かにベトナムの音楽を聞いていると、単語ごとに声調があり、それによって音の高低差が決まってくるので、言語そのものがまるで歌のようです。さらに声調だけでなく、話し手の感情が発音の抑揚に影響するとさらに音楽的になり、メロディーのようにすら聞こえます。
おすすめの曲はこちら!
このように言語としても音楽的な特徴のあるベトナム語ですが、実際に音楽を聴いてみましょう。今日はベトナムの文化やV-Popの特徴が表現されている私のおすすめ3曲をご紹介します。
Hoàng Thuỳ Linh – Để Mị Nói Cho Mà Nghe(日本語訳:ミーに話させてよ)
ベトナムの人気女性アーティスト、Hoàng Thùy Linh(ホアン・トゥイ・リン)が2019年にリリースした楽曲です。この曲は、ベトナム文学や伝統文化を現代のポップスに見事に融合させた作品です。歌詞やMVには、ベトナムの有名な文学作品『Vợ Chồng A Phủ』(アフ夫妻)のキャラクター“ミー”に着想を得て、女性が逆境を乗り越えて自由を追い求める姿を描いています。特に、少数民族の華やかな衣装や、伝統楽器を活用したメロディーが印象的です。ベトナム国内で多くの音楽賞を受賞し、2019年の年間ベストソングにも選ばれました。
TRÚC NHÂN – LỚN RỒI CÒN KHÓC NHÈ(日本語訳:大人になっても泣き虫)
2019年にリリースされたTrúc Nhân(チュック・ニャン)の楽曲で、家族の愛、特に母と子の関係をテーマにした感動的な作品です。タイトルの「泣き虫」は、成長してもなお母親の前で素直な自分を見せる特別な親子関係を象徴しています。MVでは、母親との思い出や成長過程を描き、親への感謝を伝えるメッセージが込められています。家族を大切にするベトナム文化の温かさも感じられる一曲です。
Đen x JustaTee – Đi Về Nhà
2020年にリリースされたĐen Vâu(デン・バウ)とJustaTee(ジャスタティー)の楽曲で、都会で働く若者が旧正月(テト)に故郷へ帰る心情を描いています。歌詞には家族や故郷への愛が込められ、「家は変わらず私たちを待っている」といったフレーズが印象的です。MVではホンダのバイクで故郷への道を進む様子が描かれ、家族との絆や帰省の温かさを象徴しています。旧正月(テト)はベトナム最大の祝祭で、旧暦の新年(毎年西暦の1月末から2月中旬頃)に行われます。この期間は、家族と過ごす時間として特別視されており、そのような背景も伝わってきます。
V-Popブームは必ず来る!
V-Popは、音楽としてだけでなく、ベトナムの文化や価値観を知る素晴らしいきっかけにもなります。
まだ聴いたことがない方は、ぜひ今回ご紹介した楽曲から試してみてください!
先日知り合ったベトナム人に私の好きなV-Popアーティストの名前を挙げたところ、目を見開いて大喜びされました。日本人がベトナムのポップミュージックを聴いているのはまだまだレアケースですよね。
V-popを聴いていると、キャッチーなフレーズだけでなく情緒を表現したバラードも多く、私の年齢でも落ち着いて聴くことができます。ベトナム人の歌の上手さはもちろんですが、私はベトナムの経済発展も相まって、「K-Popの次にはV-Popの流行が来るよ」と周囲にアピールしています。
今後もV-Popの進化に注目です!
V-Popの魅力については今後もご紹介したいと思います。
お楽しみに!